ビタミンF(重松清/新潮文庫)

ビタミンF (新潮文庫)

「なんでだ……俺だって、子供のこといつも考えて、心配してるじゃないか」
「でも、あなたには弱いところを見せられないのよ、みんな。あなたは強いから」


あれ、もしかして直木賞受賞作を読んだのって初めてじゃなかろうか……

何故いきなり重松清かというと、バイト時代の唯一の男の後輩が重松清しか本を読まない男だったから。
結局あんま仕事できないまま辞めていった後輩は、元気でやってんのかなぁ。

なんて思ったり。


さて、今作ですが。
まず一言だけ声を高らかに。

大人は読め!! 子供も読め!!


正直物語として面白いかって言われるとふっつーなんですが、描き方があまりにリアルでね……
全7話の短編なんですが、全て別の家庭を描いています。
特に失敗をしたわけでもないのに、気がついたら家庭が微妙な空気になっていて後戻りできないところまで来ている──

そんな家庭を描いたお話たちです。


読んで気づいたことは、円満な家庭というのは実は本当に難しくて、親と子供、両者の努力が必要だということ。
努力してもどうしようもない家庭もあって。

物語の中で、解決しないんですよね。
良い方向に行くきっかけは描かれるんですが、全くもって解決せずに終わる。
これって要は、家庭の在り方に正解なんてないってことなんですよね。

こうすれば上手くいく。そんな手本なんてあるはずはなくて。
それぞれの家庭の中で努力するしかない。

親は人生長く生きているだけあって、色々知っているけれど、子供を育てるということに関しては初心者で素人。
そのくせやり直しはきかない。
間違った育て方だってするし、育て方が正しいのかどうか分からずに臆病にもなります。

育て方に正解がない分、考えすぎて動けなくなってしまう。

子育ての難しさってのは、大人になると子供の頃の気持ちや感じていたこと、考え方をすっかりめっきり忘れてしまう、というものがある。
自分が子供の頃、親に対してどう思っていたか。そんなことを意識しながら徐々に上手くやっていくしかないですね。

ただ、いくら頑張っても想像できない気持ちがあって。
それは、男女差。

娘の育て方ってのは難しいんだろうなぁ。