扉の外(電撃文庫)

扉の外 (電撃文庫)

密室を支配するのは
特殊な“ルール”と“ゲーム”──

第13回電撃小説大賞「金賞」受賞作。

「大賞」のミミズクが個人的に大当たりだったためそこで満足してしまって、他の受賞作は全然注目してなかったんですが、これはオススメ。


物語の大筋は、


修学旅行に行くはずだった学生達は、目を覚ますと密室に閉じ込められていた。
そこで、ソフィアと名乗る人工知能から生きるためのルールとゲームが提示される。


とこんなとこなんですが、素直に、面白い。

設定はパッと見た感じバトルロワイアルですが、あっちと違うのはあくまでクラス単位で争うことになること。
更に、暴力行為が禁じられていること。


まあ、ライトノベルだけにそこまでリアルで生々しい描写はないだろうなぁ……
とか思っていたら大間違い。
下手な暴力がない分、集団行動の難しさや気まずさが、実にリアル。

高校生くらいがやりそうなことが、非常に良く表現されています。


登場するメインキャラも、クラスをまとめたがる委員長タイプ、演技派の女神タイプ、純粋(?)な女神タイプ、とまあ各クラスに核となる人材が上手く配置されていて、食糧や娯楽のために与えられたものを消費するか、他クラスを攻撃・防御するために消費するか、などの違いがあって実に面白い。


個人的に6組の方針を見たときは、女ってこえー、と思った次第であります。
確かに、最近は非常時は女性の方が精神的に強いって感があるんですよね……


正直言って、主人公は状況に流されるままに行動しているので、あまりパッとしないんですが……
その主人公の行動のおかげで、様々な状況が見えてくるのは何処か皮肉。


作者の文章もそこまで上手くなく、時おり誰が台詞を言っているのか分かりにくかったりもします。
しかし、それを補うほどに設定・展開が上手い。
とにかく集団の感情表現が上手く、どんなに頑張って行動しても各クラスが崩壊していくようなゲーム設定は憎いことこの上ないです。

2巻があまりに面白かったため、ちょっとその分の補正がかかってる感はありますが、1巻もラストの締めくくりがあんまりだったこと以外は秀逸な出来です。

つーか、1巻って立場の優劣をしつこい程に主人公が感じていたり、全て2巻への布石って感じがあるんですよね。
何も判明することもなく、何も解決することなく終わってしまった1巻。


続きが気になる方は、是非2巻を!


ちなみに、私は蒼井典子派です。
聖人君子や八方美人は、いざという時胡散臭く感じてしまうんですよね。
素が見える女神は最高。